誠-巡る時、幕末の鐘-

口には気をつけよう




奏はしばらくした後、ユラリと立ち上がった。


目が異様な鋭さを帯びている。




「おい、奏! やめろ!」


「雷焔君!」


「……今は奏と呼ぶな」


「じゃあ。……星鈴、やめなよ」




奏の言葉に、何かを察知した沖田が言った。


星鈴とは奏が大事にしている主、ミエがつけたありがたい名だと奏は考えている。


どうやら、言って欲しかった言葉だったらしい。


奏が一瞬ニヤリと笑い、すぐに表情を戻した。




「はっ! 星鈴? 女の名のようだな。さっきの奏といいお前の名をつけた者は、お前の性別すら分からない馬鹿だったようだな」




瞬間、空気が絶対零度まで落ちたかのごとく凍り付いた。


気のせいか、肌がピリピリする。




「お前のような子供を持った親の顔が見てみたいわ。……うっ!」


「……」




……今の言葉が決定的なものになった。



< 260 / 972 >

この作品をシェア

pagetop