誠-巡る時、幕末の鐘-

動乱の幕開け




あの事件から五日が経った。


奏は空をぼんやりと眺めていた。




「奏、どうしたの?」


「珠樹、雑鬼達が騒いでる」




一般人には見えないし聞こえないので、彼らは好き勝手しているのだ。


なんでも長州の奴らが怪しい動きを見せているらしい。




「戦でも始めるんじゃない?人間は争い好きだから」




珠樹はさして興味もないといった風に文机に向かった。


何か書き物をしているらしい。




「何書いてんの?」


「これ?里を復興するにあたっての土地とか色々必要なものについての資料だよ」


「ふ〜ん。ふふっ」




いきなり笑い出した奏に珠樹は不思議そうにしている。




「何で笑うの?」


「ん〜?珠樹が長らしく仕事してくれてるなぁって」


「当たり前でしょ、長なんだから。……でも後でご褒美ちょうだいね?」




珠樹が妖しく笑った。



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