誠-巡る時、幕末の鐘-



―――屯所




「近藤さん!!もう俺達じゃどうしようもなくなったぜ!?」




永倉が近藤に詰め寄った。


近藤の部屋には近藤派が集まっている。


奏は留守にしていたが。




「近藤さん、ここまで来ちゃ仕方がねぇよ」


「トシ…」


「芹沢さんは平素の時は素晴らしい方なので、惜しいですが……」


「山南さん……」




土方、山南から言われ、近藤も唇を噛みしめた。


彼は心根が優しすぎるのだ。


決断にどうしても踏み切れずにいた。


こういう場合は、誰かが汚れ役を引き受けなければならない。




「近藤さん……次、何か動きがあったら、その時は。いいな??」




土方が諭すように言った。


みんな沈痛な表情だ。




「………あぁ。そうしよう」




近藤は手を握りしめ、力なく頷いた。




「お前達もいいな??」


『あぁ(はい)』




みんな首を縦に振った。


奏は一人、屋根の上で寝そべってそれを聞いていた。



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