誠-巡る時、幕末の鐘-

間者の最期




―――翌日




「どういうこと、これは??」




奏と響が屯所に帰ってきた時、目にした三つの遺体。


それは見慣れた者達のそれだった。




「楠さん、御倉さん、荒木田さん!!」


「納得のいく説明をしてもらおうか??」




響は取り乱し、奏は凍てつく寒空のような視線をみんなに浴びせる。




「彼らは長州の間者。桂に命令されてたんだよ」


「桂…桂小五郎か」




事を知っていた珠樹が、二人に簡潔に説明した。




「じ、じゃあ、彼らが芹沢さん達を??」




響が恐る恐る尋ねた。


まだ信じられないのだろう。


特に楠小十郎とは歳が同じなせいか、よく話していた。




「そうかもね。永倉さんが昨日、殺されそうになったっていうしね??」




珠樹が永倉の方を見て肩をすくめた。




「本当?」


「あぁ、荒木田にな。なんとか誤魔化してただが」




真実らしい。


近藤四天王の一人に手を出すなど……。


無謀なことをした。



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