誠-巡る時、幕末の鐘-

墓参りと不審な影




―――数日後




怒涛の勢いで机の上にある書類を奏は片付けていた。


全部鷹に元老院から運ばせた書類だ。


ナルの言うとおり、大量にあった。


時刻はすでに、真夜中になろうとしている。




「くそ〜。これほとんど、カミーユとレオンのせいじゃんか!!」




怒りのあまり、敬称をつけるのを忘れている。




「奏、もう明日にしたら??」




見兼ねた珠樹がそう言ってきた。




「………そうだ。墓参りしてくるよ」


「墓参り??こんな時間に??」




珠樹がそう言うのも無理はない。


真夜中に墓参りに行く奴はいない。


だが、奏に常識は通用しなかった。




「まだ一回も行けてないし。思い立ったら即行動だから、私」




そう言って部屋を後にした。




「やれやれ、仕方ないな」




珠樹も肩をすくめて呆れつつも、奏の後を追うべく部屋を出た。


辺りは当然ながら暗い。


鬼の目だから昼間と変わらない行動ができるのだ。


誰も起こさないように、静かに気配を殺し、酒を持って屯所を二つの影が出ていった。



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