誠-巡る時、幕末の鐘-
大切な家族
―――翌日
「桜花〜??桜花〜??」
奏は姿が見えなくなった桜花を探していた。
寒いので抱いていようと思ったのだ。
雪が昨日の夜から降り始めて、先程ようやくやんだ。
気温がぐっと下がり、寒がりの奏にとってかなり堪えている。
「どこだ〜??屯所から出たのか??」
「どうしたんだ??」
「あ、豊玉……じゃなかった土方さん」
つい土方の俳句を作る時の名で呼んでしまった。
ついだ、つい。
わざとではない……という確証は残念ながらどこにもない。
「…………俺は土方。俺は土方」
遠い目をして自分の名前をぶつぶつ呟き始めた。
暗示をかけているらしい。
端から見ると、かなりやばい。
超がつく不審者だ。
でもここはまだ屯所のうち。
せいぜいが朝稽古を終えた隊士達に二度見される程度だ。
隊士達の心中は推してはかるべし。