夏の記憶
それはほんの一瞬だった。


「おい優奈、おまえ古典の小テストの範囲教えろ」


タケルはいつものようにこーちゃんとわたしたちの席にやってきた。


「わたしだって勉強したいんだから」


ノートと教科書をチェックしているわたしは、顔をあげない。



「優奈はいつもいい点とるんだから少しくらい勉強しなくたっていいでしょ」


無茶苦茶なことを言うのは梢。


「お願い、ぼくたちは優奈ちゃん頼みなんだから」



いつも優しいこーちゃんまで言い出したので、わたしたちはテスト範囲にしるしをつけたわたしのノートを4人で見るために、一つの机を4人で囲むといういかにも狭いスタイルになった。


「もう暑苦しい!」


思わず声とともに顔を上げた時。


私の視界の先には私の知らない光景が映ったんだ。



それは、じっとこちらを見る視線。



憂いを帯びたような、悲しそうな…


怒っているような


それでいてとても色っぽいような。




その潤んだ瞳と、私は目が合った。



それはほんの、一瞬だった。
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