夏の記憶
「なにブサイクな顔してんだよ」


聞きなれた声に振り返ると、タケルと幸ちゃんだった。



その時のわたしは、実をいうと変な顔を見られてしまったことよりも、もっと他のことに気を取られていた。



その日のタケルの恰好は、白いT-シャツに少しダボッとしたダメージのジーパン。白いナイキのスニーカーというシンプルなものだった。


わたしはそのタケルの服装をみた瞬間、以前にもどこかでこの場面を経験していた気がしたのだ。


それは、単に服装という次元のものではなくて、

【この静幡多神社の夏祭りの日、梢に頬を伸ばされていた時にタケルと幸ちゃんが現れて、タケルがわたしに「ブサイク」といった】

という鮮明な部分も含んでいた。



そう、わたしは何かを忘れている気がする。


それはとても大切な何か。


とてもとても大切な……
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