夏の記憶
白いシャツにダメージのジーパン。


笑うといたずらっぽく光る大きな目。



「タケル」



私は再び溢れる涙を腕でぬぐった。



お社の前には、私の知っているいつものタケルが立っていた。



「優奈」



タケルはそう言って穏やかな笑顔でほほ笑む。




「タケル、心配してたんだよ。お母さんもおばさんもタケル死んじゃったって思ってて…」



そう言って私は笑顔を作った。



「梢も幸ちゃんも私んちいるからさ、帰ろ、タケル…」




そう言って立ち上がりたかったけど、なぜか私の足には力が入らなくて、地べたに座り込んだまま3メートル程先にいるタケルを見上げることしかできない。



「優奈、じゃあね」



そう言ってタケルはにっこりほほ笑んだ。
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