Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。
「ま、真白ちゃん……保健室、いるって」
「ケガか!? それともいつもの……」
「いつものみたい。ここで倒れた時みたいに、全くの無反応だってさ」
ケガじゃないことに、まずは安心だ。
「――ちょっと、様子見てくる」
「なら、オレも付き添おう」
弁当を片付けながら、晶が言う。
「保健委員が一緒の方がいいだろう?」
「晶、気が利く! ついでに熱っぽいって言って、そのまま休めば?」
「ズルはヤバいだろうが。そんじゃ晶、頼むな。隼人は弁当の処理」
「わかってますって。志貴、理性は保てよぉ~」
「学校でなんてしねぇーよ」
ま、未遂的なことはあったがな。
寝込みを襲おうとは思っていない。
「「――失礼します」」
保健室に行くと、女の保健医の先生がいた。
「どうかしたの?」
「はい。彼が熱っぽいようなので、念の為連れてきました」
「じゃあはい。これで計ってみて」
体温計を脇に挟み、しばらく待つ。
ベッドを見れば、一つカーテンが閉まっている。
「――誰か、寝ているんですか?」
「そうよ。だから静かにね?」
「望月さんだと聞きましたが、大丈夫なんですか?」
「あら、お友だちなのね。そうなの。いつもみたいに倒れちゃったみたいで、二限目からずっと寝てるのよねぇ~。あ、鳴ったわね」
体温計が鳴り、数値を見た。
「……37℃8」
「あら、ちょっとあるわね。ベッド空いてるから、寝てても構わないわよ?」
それなら……熱もあるんだし、寝かせてもらうのもありか。
休ませてくれるように言い、オレも真白と同じく、保健室で休んだ。
◇◆◇◆◇
目を開けると、そこは準備室じゃなかった。
起き上がれば、周りには白いカーテン。保健室にいるのだとわかった途端、体がぞくっとした。
え、っと……今日の担当は。
ゆっくりカーテンから覗き見ると、机にいたのは、女の先生だった。
よかったぁ……。
安心したら、急にお腹が空いてきた。
携帯で時間を見れば、時間はもう三時過ぎ。とっくにお昼は過ぎていた。
「――あら、起きたのね」
「は、はい」
「もう授業も終わるから、チャイムが鳴るまではいなさいね。私、ちょっと職員室行くから。――あ。そこで寝てるの、お友だちみたいよ」
そろそろ起こしてあげてねぇ~と言い、先生は保健室から出て行った。
お友だちって――誰が寝てるんだろう?
そっとカーテンを開ければ、見えるのは茶色の髪。
前に回り顔を確認すると、寝ているのは梶原先輩だった。
「先輩。下校時間ですよ?」
「?――――んん…」
声をかけると、先輩は布団にもぐってしまった。
何度か声をかけてみたけど、それでは起きそうもない。
「先輩、起きて下さい」
軽く体を揺さぶれば、もぐった頭が出てきた。
「ぅん……なに」
「もう下校時間です。起きて下さい」
「……もう、そんな時間か」
目蓋を擦りながら起き上がると、先輩は私を見るなり、両肩を掴んだ。
「ど、どうしたんですか……?」
「ケガ……してないか?」
「だ、大丈夫、です。打ったりも、していないので」
それを聞いて安心したのか、先輩は大きく息をはいた。
「ずっと寝てるって聞いたから、今日はそのままなんじゃねぇーかって思った」
「ごめんなさい。心配をかけて……」
「謝ることねぇーよ。つーか、なんで真白が起こしに来てんだ?」
「先生は職員室です。隣で寝てるのはお友だちだから、起してあげてねって」
「ふ~ん。じゃ、今ここには二人っきりってわけか」
「っ!?」
「ははっ――やっぱ、お前軽いな?」
急に手が引かれたと思えば、私の体は、先輩に覆いかぶさるようになっていた。