Sweet kiss〜眠り姫は俺様王子に捕まりました。

『そりゃあ面倒だなぁ~とか思うわよ? でも、だからといって責めたりするのは違うでしょ』

 さらっと、そんなことを言ってくれた。

『別に、付き合えない時は言うって。ねぇ、どっか回りたいとこないの?』

 紫乃ちゃんがいてくれたから、修学旅行も楽しむことができた。



 でも――いつかは、頼らないでいたいな。



 いつまでも、紫乃ちゃんに付いてもらうことなんてできない。
 だから早く、一人でもやれるようにならなきゃ。

 ――――――――――…
 ――――――…
 ―――…

 誰かが、私を呼んでる。
 目蓋を開けても、まだハッキリと姿が見えない。

「まーしーろー」

「…………?」

「こんなとこで寝るな。治らねぇーぞ?」

「……しの、ちゃん?」

「――オレが女に見えるのか?」

「…………っ!」

「やっと起きたか」

 目の前にあったのは、梶原先輩の顔。
 あまりにも近かったから、思わずのけぞってしまった。

「ど、どうして――?」

「藤原に開けてもらった。んでもって、藤原は自分の部屋」

「そ、そうですか……」

「なんだ、オレだけじゃ不満か?」

「い、いえ! そんなことないです」

 ただ、びっくりしただけだし。

「熱は――下がってるな」

 先輩の手が、おでこに当てられる。
 体温計でも計って見たら、熱は37℃。まだちょっとダルいけど、朝よりはよくなっていた。

「何か食べるか?」

「まだ大丈夫です」

「なら、ベッドで休んでおけ。まだ少しあるんだから」

「そうします。――っ!?」

 立ち上がった途端、体を抱えられた。

「あ、あのう……歩けます、けど?」

「いいんだよ。黙って抱えられてろ」

 ベッドはすぐそこなのに、先輩は譲らない。

「…………」

「そんな身構えるな。病人襲うほど、非常識じゃねぇーよ」

 ベッドに寝かすと、いつものように頭を撫でられた。
 こういうの……好き。
 先輩の手って、なんだか安心する。

「寝てもいいぞ? ギリギリまでは、そばにいてやる」

 ちょっと眠たいけど……そんなの、もったいない。

「せっかくだから、話がしたいです」

「なら、少し話すか。――今日は何してた?」

「久々に、テレビ見てました」

「久々って、あまり見ないのか?」

「倒れたりすると、夜中や朝方に起きてしまうので」

 だから、基本的にDVDか携帯になるんだよね。

「そういうことか。で、何を見てたんだ?」

「近くの駅のスイーツ特集をやっていたので、それを見てました」

「気に入ったのあったか?」

「はい。一度は、お店のパンケーキを食べてみたいなぁって」

「――なら、今度行くか」

「――今度、ですか?」

「あぁ。つーか、今週の日曜にでも行くか。予定入ってるか?」

「と、特には」

 これって……デートの、約束?

「ん? 顔赤いぞ?」

「だ、大丈夫です! ちょっと、汗が出てきて」

 そう言えば、先輩は絞ったタオルを持って来てくれた。
 拭いてやろうか? って言われたけど、それは全力で断らせてもらった。
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