LOST MUSIC〜消えない残像〜
この染みは留まることを知らず、いとも簡単に俺の全てを染め尽くせるのだろう――。
この雨がアスファルトをあっという間に濡らすように。
でも、こんな俺でも痛みに染まるわけにはいかないんだ……。
俺はその広がりを無理矢理止めるように、ベッドに重く沈んだ身を起こす。
そして、レースのカーテンを微かに開ければ、そこには案の定、重苦しい灰色の空。
夏だというのに雨のせいで窓は開けられず、室内はいつも以上に閉塞感に満ちている。
しかし、俺がそんな空気にため息を吐いた時、視界の端に映り込んだものに目が止まった。