LOST MUSIC〜消えない残像〜


「よかった――。ずっと探してたんです」


錫代の姿に一瞬目を見張り、すぐに唇を噛み締めた。


俺なんか、放っておけばいいのに。


なんだか余計に情けなくなる……。


だから、俺は俯いて無視した。


「星、綺麗ですね」


なのに、錫代はそんなのものともせず、俺の隣にそっと腰を下ろす。


すると、優しく甘い桜のような香りがふわりと舞った。


何故か懐かしく感じる……。


「星羅さん――ステキな人なんでしょうね。詩を読んで、憧れちゃいました」


ふと、横を見れば、錫代は水晶みたいな瞳に夜空の星々をキラキラとうつしていた。



< 202 / 299 >

この作品をシェア

pagetop