LOST MUSIC〜消えない残像〜


ギターがないのに、個性はバラバラなのに、成り立ち重なる三つの音。


馴染みの音と言ったが、それは間違いだった。


時間が止まっているのは、いや、寧ろ後退しているのは俺だけで、三人の音は成長してる。


あの頃よりずっとこの部屋いっぱいに響いてる――。


……でも、もうこの音の中に、俺のギターも歌も、……星羅の笑い声も……存在しないんだ。


胸に大きな穴が開いたよう――。


一体その穴には何があったんだろう。


ただただ三人の音色が穴を擦り抜けていく。


――もう、俺は失ったモノすら、分からないんだ――。



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