LOST MUSIC〜消えない残像〜


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「救急箱、取ってくるからじっとしてろよ」


「すみません……」


俺は自分の部屋のベッドに錫代を腰掛けさせると、すぐに救急箱を取りに部屋を出た。


おふくろはどうやら出掛けているみたいだし、親父はまだ庭で仕事をしていたから勝手口から入ることでバレずにすんだ。


おふくろたちだって、錫代を見たら驚くだろうからな。


本当は俺だって自分の部屋に、星羅にそっくりな錫代なんか入れたくなかったさ……。


さっさと手当てして帰そうと、リビングの棚の上にある救急箱を手に持ちまた来た道を戻った。



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