赤い電車が走る街
ギャンブル電車
東京都心と、神奈川県下を結ぶ、京浜地帯を走る沿線で起こった出来事。

以前、この赤い列車が走る沿線には、競馬場が二ヵ所、競艇場が一ヵ所、競輪場が二ヵ所あった。

それ以外にも、パチンコ店が数多く点在していた。

人々は赤い列車を『ギャンブル列車』と呼んでいた。

古くには、罪人を流刑にする港や、処刑する場があり、当時身分が『人に非ず』とされている者達も住んでいた。

そんな街の現代に起こった出来事をお話ししよう。

今は線路の高架化が進んでいるが、少し前までは下を走っていたため、ギャンブルで負けが込み、列車に飛び込む自殺者が数多くいた。

この沿線の、とある駅の近くの花屋に勤めていた、Aさんの体験談。

Aさんは、毎日仕事に追われて日々を過ごしていた。

花屋の仕事は、仕入れた花を販売するだけではない。

この花屋では、葬儀の飾り付けをメインにやっていた。

人が死ぬことは前もって判ることではない。

それ故に、普段の準備には余念がない。

暦の上では、友引は火葬場が休みになるため、その前日を利用して、大量の花籠を製作する。

友引の意味をご存じだろうか?

『勝ち負けのつかない日』つまりギャンブルで言えば、チャラってこと。

この日もいつも通り、作業場で花籠を製作していた。

目標は三百個。

夜中までかかるが、毎度のことだ。

AさんとバイトのB君の二人で、仕上げた時には午前一時を回っていた。

もう電車で帰ることは出来ないので、二人は作業場の二階にある、仮眠室に泊まることにした。

簡易ベッドに横になると、すぐに眠りについた。

Aさんは夢を見た。

隣りで寝ていたB君の身体が、白と黒のオーラに包まれていた。

白と黒のオーラは、時折混ざり合い、漂っていた。

それを見たAさんは、
「ああ、こいつも長くはないな」
と思った。

その刹那、
『お前だよ』

苦しむ男の声が聞こえた。


その夢を、私に語った二日後にAさんのお通夜が執り行われた。


白と黒のオーラは、勝負が着かなかった事を、意味しているのではなかろうか。

だからB君は助かった。

ということは、Aさんは黒が勝ったのだろうか…。
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