17-セブンティーン-


大盛りにされたご飯に箸をつける。

生姜焼きは熱くて、額にじんわりと汗が滲む。

店内には頼りない扇風機が回っているが、見た目通りの働きで、実際俺のとこまで風は届いていない。


どんなに考え事したって、どんなに悩み事したって

いつだって腹は空くし、眠ればなんとなくおさまる。

体は正直で、俺は単純。

そして、そんな考え事も悩み事も、きっと本当に大事なことじゃなくて

俺にはまだ大切なものがない。


今わかってることは、生姜焼きが上手くて、でも先生がちょっと気まずくて

保坂さんの存在は謎で、親しくはなりたくない気がして

でも彼女のことを考えてしまう自分に納得がいってない。


生姜焼きはあっという間に食べきってしまった。

先生は「いい喰いっぷりだなぁ」と笑い

味噌汁を飲み干して、漬物を少しかじって箸をおいた。

しばらくして立ち上がり、本当に先生が勘定を払ってくれた。


「ごちそうさまでした」

「あぁ、また来ような」


大した話をしていないのに、先生は嬉しそうだった。


「またな」

「はい、さようなら」


そういって俺たちは別れた。

太陽はさらに高く昇り、ギラギラと照りつけていた。


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