17-セブンティーン-


午後、食後の現代社会はキツい。

教壇から確実に死角になっているこの特等席で、うつ向いて教科書を見るフリをして

うとうとと意識を手放そうとした瞬間


ガラガラガラ!


真後ろのドアが開いて、思わず体がビクッと反応してしまった。

教室中で俺と同じ反応が、ちらほら見られた。


ぺたぺたぺたと小さな足音をたてながら、音の先を見ると

保坂さんが全身びしょ濡れで、靴下と上靴を持って、席に向かっていた。

当たり前のように、何も入ってなさそうなカバンを持って、当たり前のように


ガラガラガラ


と、出て行った。


2年になって、同じクラスになって
初めて彼女の存在を知った。


初日のHRの後、翔太を含め、数人の《1年のときから同じクラス》の人に聞いた。


『授業開始から30分前後で、窓からドロップアウトするから』


そんな奇行をやってのける人がいれば、
噂のひとつやふたつ、たってもおかしくない。


しかしなんで俺は彼女の存在を知らなかったのだろう、と思ったが

その疑問は初日に解決した。

1年のときからの彼女の《元クラスメイト達》にとって
彼女は《当たり前の日常》だったのだ。


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