【ほのB】リトル・プリンス
 そのまま、なし崩しに、直斗を置いていかれそうで、僕は最後の抵抗を試みる。

「あんたは、僕が昔、暴力団の関係者だったって知っている上に。
 現在進行形で、同性愛者だって判っているよな?
 僕なんかに、息子を預けて危険だとか、イタズラされたらどうしようか、とかって、ちっとも思わないの?」

 そんな僕の言葉にシェリーはにこっと笑った。

「螢ちゃんは、そんなヒトじゃないわ。
 ちょっと短気だけど、本当は心の優しいコだし。
 兄さんや、早瀬倉の事が無かったとしても、子供を傷つけるようなことは、絶対しないでしょう?」

 ……う。

 シェリーのヤツ!

 僕を信頼しきった、きらきらしい目で見やがって!

「これから、僕には用があるんだ!」

 シェリーの瞳に耐えきれず、視線を泳がせた僕に、彼女は、ほほ笑んだ。

「今日、螢ちゃんは、夜勤明けで『仕事』は、ないはずよね?
 直斗は、どこに連れて行っても構わないし『静かに』って言えばちゃんと静かに待ってる子だわ。
 そんなに迷惑には、ならないはずよ?
 たぶん」

「たぶん、って!
 おい!」

 僕たちの家から出るために、玄関で靴をはき。

 直斗に投げキッスを送るシェリーに追いすがろうとすれば。

 彼女は、まるで、花のような笑顔を、僕に向けた。

「じゃあ、直斗をよろしくね?
 新米パパさん」

「パパだって!?
 ふざけんな!」

 玄関の扉を開けようとするシェリーの肩をつかめば。

 彼女は、やんわりと、僕の手を外し、両手で包んで言った。

「あ。
 そうそう、螢ちゃん。
 あんまり嬉しいからって、その格好のまま、あたしを追いかけない方が良いわよ~~?
 あたしには、良い目の保養になったけど、普通。
 真っ裸で街を歩いたら、捕まっちゃうからね~~?」

「~~~!」

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