僕らの瞳にうつる世界。


「へぇ~……」



興味なさげな声を出し、横目でこちらを見る彼を軽く睨む。


悔しいけど、聴きたい。

聴いたら、前向きになれそうな気がするから。



「でも、この前の曲は歌えない」


「え? どうして?」


「完成してないから」



あたしの方を一切見ずに言った彼はその悲しい眼差しをどこかに向けていた。


同じような瞳を、どこかで見たことがあるような気がする。


思い出せないけど……



「途中までしかできてないんだ。たぶん、完成することはないと思う」



そんな……


あからさまにガッカリしていると彼がギターを取り出しながら



「違う曲なら」



と、おそらくはにかんだ。

……彼の笑顔は判断が難しい。


























< 58 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop