腐女子も恋していいですか?
「そ、それは・・・・・・」


 それは聡くんだよ。そう伝えていいのか、悩んでしまう。
 どうしてか、私の知っている聡くんとは違う気もして・・・・・・。


「俺には関係ないから言えないか…。しつこく聞いてごめん」
 俯いて、落ち込む聡くんを見ると、きゅんと胸が締め付けられる。


「謝らないで! 関係ないわけじゃないし」
「え、それどういう意味?」


 ビックリした聡くんの顔に、はっ! と我に帰る。


「それは・・・・・・」
「もしかして、俺が知ってる人?」
「・・・・・・うん」


 もう、隠しきれない。
 さっき、聡くんの切ない顔を見て、…胸が苦しくなってわかった。
 やっぱり私は、聡くんが好きなんだ。


「まさか・・・・・・透・・・・・・とか?」
 眉根を寄せて、何かを考えるような聡くんは、少しピリピリしているように感じる。


「違うよっ! 私が好きなのは・・・・・・」
「好き…なのは?」
 

 私の頬にそっと手を添えて、私を見つめる聡くんの瞳は、艶やかな光を放っていて、私を捕えて離さない。

 この瞳に誘導されるように、私の胸を切なく締めつけるその気持ちに嘘をつかないように、恋を告げた。


「私・・・・・・、聡くんが…好き」

 思い切った告白をしたつもりだったのに、聡くんは驚くと思ったのに、私の考えを裏切り、あっさりと、こう告げて来た。


「俺も、岬が好きだよ」


 聡くんはフッと笑って、私の頬を傾けると、唇にキスを落としてきた―――。
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