死にたかった

私と彼

やっぱり死にたい。最近そう思うようになった。
彼と付き合う前に戻ったような感覚。
何をしても楽しくない、罪悪感しかない。
だってもう、雨ちゃんはこの世にいないのだから。
こんな気持ちをするくらいなら私が死ねばよかった。死にたかった。
そしたらきっと、雨ちゃんは彼と幸せになれていたのではないだろうか。
雨ちゃんはきっと私をかばってくれたのだろうけど、でも、それは意味のないことだった。それだけだ。意味のないこと、だなんて他人が聞いたら怒るかもしれない。でもそうだった。雨ちゃんが救ってくれた私という人間は、死んでしまった。雨ちゃんが本当に救いたかったであろう彼という人間もきっともう、戻ってはこない。
私が死んで、悲しむ人はきっといないんだ。いや、彼、それと雨ちゃんだけが悲しんでくれる。でもね。雨ちゃんが死んで悲しむ人はもっと、いっぱいいるんだよ。
雨ちゃんにそれを伝えることはできないけれど。

彼とは随分会うことはなかった。2週間くらいして、改めて彼の家で会って話をすることになった。
会って話すことは決めていたつもりだったのに、彼を前にすると何も話せなくなった。少しの間のあと私がごめんと言うと空気がさらに重くなった。
彼は、言った。
やっぱりもう、雨が死んじゃって、もう、無理だと思う。
私は頷いた。
私が言おうとしていたのも確か、そんな感じの台詞だったと思う。彼の目を見ると、死にそうな顔をした私が映っていた。だってもう。無理だよ。そんなこと、分かりきっていた。

彼はこの町を去るらしい。
それと雨ちゃんの両親も、この町を去るらしい。
私のせいで。いろんなことが変わってしまった。

ありがとう、今まで。大好きだったよ。ずっと。
確かそんなことを、私は言ったつもりだ。




end

→あとがき
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