月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「バレた?」

「当たり前だ」

うーん、湯月くんと連絡とれただけでニヤついてしまうなんて。

不覚だわ(何が)。

「そういやさっきはえらく難しい顔してたな」

…それは和夫さんとの事を思い出した時だな。

「あんま感情の高低差が激しいと風邪ひくぞ」

あんたはフットボールアワーの後藤かい。

「で、一体なにがあったんだ」

う。

どうしよう、和夫さんとの事を話すべきか。

いやダメだ。

『短気おこすなって言っただろ』

とか言いながら、鼻をつまみにくるに決まってるもん。

「なんでもない」

あたしはごまかすことにした。

「ところで達郎兄ちゃん、高森さんのことはどうなの?」

「あ…?」

達郎兄ちゃんはポカンという音のしそうな顔をした。

「高森さんて誰だ」

…眼中に無しかい。

「あたしの担当ナースさんだよ」

「そうだったか」

眼中どころか心にもなしだなこりゃ。

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