月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
するとあたしの横を、高森さんが走っていった。

「高森さん!」

あたしが大声で呼び止めると、高森さんは足を止めて振り向いた。

その顔は蒼白だった。

「どうしたんですか、一体」

近付いたあたしに、高森さんはつぶやく様な声で言った。

「雪村さんが…」

多江さんが?

「屋上から、飛び降りたの」

え?

高森さん、なに言ってるの?

もう一度訊き直そうとしたその時、

「高森さん、早く!」

婦長さんの声がした。

そちらに目をやると、白のブラウスに黒いカーディガン、ロングスカート姿の婦長さんがいた。

私服?

そんなことを考えてる間に、高森さんは走り去っていった。

残されたあたしは、ただその場に立ち尽くすしかなかった。

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