Dear my Dr.
「ねえ、悠ちゃん」

「どうしたの?」

家に帰ってから、パソコンに向かってる悠ちゃんに話しかける。

学会発表用のパワーポイントを作成中なのだけど、全部英語。

いくら大学の英文科出てる私でも、わからない単語が並んでいる。

医療英語、かな?

その頭の中、どうなってんの?

賢すぎるよ…

「美波?なに?」

「あっ…あのね、今日鳴海さんに会ったの。偶然すぎてビックリしたよ」

「どこで?」

「伊崎総合病院で」

「働いてんの?」

「そうみたい。4月から帰ってきたんだって。呼吸器内科の先生だったの」

悠ちゃんは一瞬ビックリしただけで、あとは“ふーん”と言って、またパソコンに向かった。

どう思ってんの?

「…美波はさぁ、2人をくっつけようとしてるんだよね?」

ギクッとした。

そういえば、悠ちゃんは“余計なことはしないほうがいい”って考えなんだよね。

やっぱ、相談したのは間違いだった?

返事を渋っていると、悠ちゃんが言う。

「偶然だと思う?」

「え?」

「梓が伊崎に就職したり、美波が呼吸器内科を受診したり。偶然だと思う?」

なに、その言い方…。

振り向いた悠ちゃんは、イタズラっぽい笑顔を見せた。

「…もしかして、悠ちゃんの差し金で、鳴海さんは帰ってきたの!?」

「さぁ、どうだろう?」
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