Dear my Dr.
「美波…怒ってんの?」

家に帰る途中。

信号で止まったときに言われる。

顔に出てたのかな?

「…べつに怒ってるわけじゃないけど、いいの」

「いいの、って何?」

悠ちゃんは、私があんな光景を見てたなんて知らないから。

そりゃわかんないよね。

「…鳴海さんって人、キレイな人だったね。同級生なんでしょ?」

「あぁ…うん。大学で同じグループだったんだ」

「なんか、ちょっと妬いちゃう」

「美波がそんなこと言うの、珍しいね?酔ってるの?」

「酔ってないも…っん…」

突然のキスに心が乱れる。

悠ちゃんの舌が、ざわめいた心を更にかきたてる。

「…でも、お酒飲んだでしょ?」

いたずらっぽく言う悠ちゃん。

平常心を保とうと、すこし乱れかけた服を整えて、座り直す。

…私は知ってるんだからね。

私っていう婚約者がいながら、本命の彼女もいただなんて。

わけわかんない。

私と結婚させてくれって言いに行ったくせに、なんで他に本命がいるの?

ずーっと同じ考えがぐるぐるまわる。

お酒のせいもあるかもしれないけど、考えがまとまらない。
< 81 / 120 >

この作品をシェア

pagetop