Dear my Dr.
お兄ちゃんはため息をついた。

「そうじゃなきゃ、悠哉くんが継ぐことになんだろ?そう考えたら、ちょっと悔しかったからさ…」

タクシーの窓の外を眺めながら、つぶやくように言った。

「ちょっと単純じゃない?」

「放っとけよ。そんなこと言ったって、悠哉くんも同じだよ」

「どうして?」

「美波を浩哉くんに取られると思ったら、いてもたっても居られなくなったって」

悠ちゃんの秘密をバラして、ちょっと得意げな顔。

「なんでそんなこと知ってるの!?」

その理由は教えてくれなかったけど…そうだったんだ…!

結婚してからのほうが、どんどん悠ちゃんのことを知ってる気がする。

付き合ってただけの頃は、ただの婚約者だったのに。

「美波は鈍そうだからなぁ~、悠哉くんも大変だろうな…」

「失礼なっ!!」

お兄ちゃんの肩を叩いた。

でも……私って鈍い?

自覚ないんだけどな。

だって、結婚する直前まで、ちゃんと愛してくれてることを知らなかったし。

「あ、ここで停めてください」

伊崎総合病院に近くなった頃。

タクシーが停まる。

「せいぜい仲良くしろよー」

軽く手をふって、病院に向かって歩いていく後姿が、堂々としていて見直す。

やっぱり、伊崎の血なのかなぁ?
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