Dear my Dr.
会場となるホテルに着くと、見知った顔の人も多い。

挨拶もそこそこに、悠ちゃんは専門的な話題で盛り上がっている様子。

「なるほどねぇ、茅島先生の病院ではそういう治療もされてるように聞いていたので」

「まだウチも始めたばかりで、症例数も少ないんですが…」

話に全然ついてけないよ~…。

作り笑顔も疲れるし。

足は痛くなるし。

そんなとき、突然私の肘をつかむ人。

「……!びっくりしたー」

幼馴染で、私とおなじ境遇の病院長の娘、奈保美だった。

「おひさしぶり」

「奈保美、全然かわってないねー」

「それ失礼だからっ!」

そう言いながらも、笑った顔は昔の面影をそのまま残してる。

大きくなって、クリスマスパーティーとかもしなくなったから、全然会ってなかった。

それでも、奈保美と会うと、小さいころに戻ったみたいに思う。

「実はね、私も結婚することになったの」

「ホントに!?おめでとう!!」

「全然おめでたくないわよ~」

奈保美は眉間にしわを寄せながら、嫌そうな顔で言う。

「私って一人っ子でしょ?だから婿養子とらなきゃなんないのよ」

「…まぁ、そうなるのかな?」

「でね、パパが連れてきたのが、超がつくくらい真面目人間でさぁ」

「いいじゃない、まじめで」

「冗談も通じないような人よ!?そんな人といると息詰まっちゃう!」

奈保美の愚痴はつづく…。

なんだかんだ言いながら、それでも結婚するって決めたところがスゴイ。

「美波はどうなの?結婚生活は順調?」

「うん、ラブラブだよ」

「ちっ…」

「“ちっ”とか言わないの!そのうち好きになるかもしれないじゃない!?」
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