そして僕は恋に墜ちた
10.
僕は、思い立った様に、人間界へと向かった。

大悪魔が凍傷を治した時、同時に生気も与えてくれたのか、長い間人間から何も摂っていなかったにも関わらず、身体は軽い。

いや、いつも以上に生気がみなぎっている。

蟻の様に、小さく見える人間達を見下ろしながら、僕は湧き上がる優越感に浸っていた。


くるくると宙返りをしたり、びゅんと勢いよく飛び上がったりしながら、僕はアリスを探す。

案の定、いつもの屋上には居ない。

さすがに、人間が飛び降りるのを目の前で見てしまった場所には、二度と足を踏み入れたくは無いだろう。

いや、僕が仕事をしていた場所…と言うべきか。

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