5時間目の背徳。
◇
65分授業。長い。
訳のわからない数式に、欠伸。
集中、出来ない。
勉強は、嫌い。つまんない。
好きなのは、背中から感じる、あの視線の持ち主。
初めて、好き、と言った。
優しくて、面白い君。
行き場の無い足をぶらぶらする。
足を曲げて、椅子の下にやる。
俺も、好き、と言った。
幸せだった。
もちろん、今も、幸せ。
曲げたままの、私の足の裏に触れた、
スリッパをはいた足に伝わる、スリッパの感触。
ああ、これはきっと、背の高い君の足。
学校用の机だと、足を伸ばすとはみ出ちゃうんだね。
私は今、確かに君と繋がってる。
すごく、不真面目な生徒。
私達って駄目だね。
チャイムが鳴るまであと5分。
チャイムが鳴ったら君と笑い合おう。
フライングの笑みが洩れる。
やば、怪しい人じゃん。
慌てて教科書で隠す。
後ろの君も、微笑んでいる気がした。
そんな、5時間目の背徳。
数式は、相変わらず、解らずじまい。
*5時間目の背徳。*