雲から愛の涙
─プロローグ─

・。
 +
  。+


────ザァ ザァ……



どしゃ降りと言ってもいいほどの、大粒の雨が降っている。


傘をさしていても足が濡れてしまうほど。



今は5月。

ゴールデンウィーク。



腕にはめられた腕時計の短い針は"5"を指していた。


先に言っておくけど、夕方の5時ではなく、朝方の5時だ。



…あぁ、失敗した。

ヒールで来るんじゃなかった。



私は、暗闇に包まれたこの時間にある場所へと向かっていた。


焦る気持ちを殺して階段を登る。



──…もうすぐ。



もう、すぐで目的地だ。



< 1 / 20 >

この作品をシェア

pagetop