どうしょうもねぇくれぇ、好き。





"渉くん"って俺だよな?


そう思いながら後ろを見る。




すると、胸くらいまでの長い髪をした女が立っていた。




「…何?」




見た事がねぇ顔だな。



首を傾げながら女に近付く。




「えっと、」




すると女は目をキョロキョロと左右上下にさ迷わせて言葉を詰まらす。




「何か俺に用事があるんだろ?」




今、とっても忙しいんだけど。


とダルく思いながらも顔だけはそんな気持ちを出さねぇように気を付ける。



あ。まぁ忙しいっつっても"脳と心が"なんだけどな。




瑞季はもう帰ってんのかな。

と目の前で俺を見上げて何かを言おうとしている女をそっちのけで瑞季の事を考える。




あぁ、瑞季が好き過ぎて重症だな。





そう思いながら一人で少しだけ笑っていると







「あの、渉くんの事が好きなの。付き合ってくれる?」







俺を固まらせる言葉が少し下から聞こえてきた。






「…は?」




いやいや、待てよ。



何かの間違いじゃねぇ?




そう思いながらも疑問の言葉を口にすると、目の前の女はウルッとしたぱっちり二重な目で俺を見つめる。






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