夏の鈴



肩を叩き終わった後、親父は俺に千円をくれた

“肩が軽くなったよ、ありがとう”そんな言葉と一緒に

俺は別にお小遣いが欲しくてやった訳じゃないし、千円だっていらないと言えば良かった

だけど、俺は千円を受けとるしかなかった

だって“お小遣いじゃないなら、どうして肩を揉んでくれたんだ?”って聞かれたら…

俺はなんて答えればいいの?

後悔したくないからやった、今までやらなかった事をした

だって親父は八日後にはもうここに居ないから

…なんて言える訳がない


子供が親の肩を揉むのに理由なんて必要ないけど、

俺はきっと理由がなければ肩を揉む事さえしない奴で、

今だってそんな悲しい未来を知っているから肩を揉んであげようと思った

今さら自分の素行や親への気遣いのなさを後悔しても遅いけど

出来る事なら理由がなくても肩を揉んであげれる子供になりたかった

……なってあげられたら良かったのに



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