《短編》夏の雪

それから3日後の夜、あたしもカレシと喧嘩別れした。



ムカついて、ムカついて、怒りが収まらないまま帰宅して、ベッドにダイブした瞬間、携帯が着信音を鳴らした。

カレシ、じゃなくて、元カレが、まだ何か言いたくて電話を掛けてきたのかと、それを持ち上げてディスプレイを確認した瞬間、



【着信:雪ちゃん】



驚きすぎて二度見した。


あいつ、ほんとに掛けてきやがった。

どうしようかとは思ったものの、もしかしたらあたしは、誰かに愚痴りたかったのかもしれない。



「ふぁーい」


寝転がったまま、通話ボタンを押した。



「ちーす。何してんのー?」


この前となんら変わりない様子。

あたしは息を吐く。



「今帰ったー。さっきカレシと別れたー」

「マジで?」

「マジでー。殴られたから殴り返してやったら、すんごい修羅場になって。ほんと最悪だったからね」

「うわー、怖っ! そりゃあ、ご愁傷さまでした」



棒読みですか。



「てか、何で電話してきたの?」

「あ、それそれ!」


雪ちゃんは思い出したように言って、



「今、そっち向かってる」

「……は?」

「暇してる気がしたから、迎えに行こうと思って」
< 21 / 62 >

この作品をシェア

pagetop