たんすの中の骨1


「ごめん、連絡先があると思って、中身少し見ちゃった」

あと写真がはさまってたけど・・・と目の前にいる憧れの人「なおくん」は、私にピンクの手帳を渡す。

「・・・ありがっとうございます・・・」

緊張のせいか、声は弱々しく、体はこわばり、全身の関節がぎしぎし鳴っているようだった。
咳払いを一つ。

「んんっん、んーっ!」

震える手でページをめくる。すぐに写真の場所になり、私はそれらを抜き取って確かめる。


「・・・あれ・・・?」

「どうしたの?」

私は頭一つ文上にある「なおくん」の顔を見上げて答えた。
不思議なことに、宝物の前では恋の緊張感なんてものはすぐにどこかへ去っていた。

「写真がたりないんです」

彼に見せるようにページをめくる。メリーゴーランドの写真、桟橋の写真、けれども。

「女の人とツーショットのヤツ、はさんでたと思うんですけど」

彼はしばらく私の手帳を見ていた。あの時を思い出しているようだった。黙ってあごを女みたいにきれいな手でなで、それからおもむろに顔を上げて言った。

「ごめん。わからない」

「そうですか・・・ありがとうございます」

私はがっかりして、けれども一生懸命にあの日の記憶を思い出そうとした。

だめだ。見当たらない。

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