Fahrenheit -華氏- Ⅱ



10月10日 AM10:00――



『ティファニーですよ』




さっきの二村の言葉が頭から離れない。


あいつ何か知ってるのか―――?


んなわけないよなぁ。


大体真咲と終わったのはもう五年以上前の話だ。


二村はたぶん高校生だったときの―――話。


古い話だ。


それでも俺はどこか腑に落ちない顔で、目の前のデスクトップを見据えている。


そこへ、どこからか蝶がひらひらと舞ってきた。


鮮やかな青い羽をした蝶だった。俺のパソコンの角に止まると、「ちょっと休憩」と言う感じで、羽を休めている。


って言うか、もう10月だぜ?蝶って春に飛ぶもんじゃない??


日本の気候大丈夫か?なんて…環境問題を考えつつも……


俺はやっぱり真咲のことを考えていた。


蝶……


嫌なことを思い出させられる。




そう言えば真咲も蝶を象った、長いピアスをつけていたな…


3㎝ほどのキラキラするチェーンの先にピンクゴールドの蝶がくっついてるものだった。


お気に入りだったらしく、彼女の耳にそのピアスがぶらさがっているのを何度も見た覚えがある。




そう言えば瑠華の携帯ストラップにも和風っぽい黒い蝶がついていた。赤い房がくっついていた洒落たものだった。



大概の女は蝶が好きだな。





女と言えば……





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