Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「な、何っで急に話が飛ぶんだよ!」


動揺してみっともなくどもっちまった。


かっこわり…


綾子はさっきまでの真剣な表情はどこへやら、にやにやした顔で俺をつついてきた。


「だってあんた柏木さんのこと愛しちゃってるじゃない♪前のあんたには考えられないほど、一途だしぃ?それにもういい歳じゃない」


「そ、それはそうだけど……だけどいい歳たってまだ26だぜ?」


俺はワイシャツの上から瑠華に貰ったリングがある辺りをそっと押さえた。


「いつまでも独り身だと、見合い話とか強引に進められちゃうわよ?」


実を言うと、その手の話は2年ほど前から山のようにきている。


親父はあまり関心がないのか、そのことについて何か言ってきたことはないけれど、神流派の親族たちが口うるさい。


「いつまでも独り身は神流にとってもよくない」だとか


「早く跡取りを」だとか……


見合いの話を山ほど持ってきては、


「旧華族のお嬢様」だとか、「○○企業のお嬢様」だとか「○○女学院(有名私立大学)のお嬢様」だとか…


とにかく名前と育ちを聞いただけで、俺はうんざり。


そんな温室育ちで世間知らずのお嬢様、俺の好みじゃないし、第一面白みに欠ける。


もっとパンチのある女は居ないのか…


って、この頃から俺ってM??瑠華に出会ってから、益々その気が増して行ったような…


まぁその点瑠華のパンチは相当なもので、俺はいつも彼女の一言にノックアウト。


10秒カウントされてもリングから起き上がれず、そのままへばっていたいと思う辺り



相当アブナイ。



そんなわけで見合いは写真も見ずにお断り。


だけど未だに俺が恋人も作らずフラフラしてると思い込んでいる親族たちから、次々と話を持ってこられる。


そろそろ真剣に親父に瑠華を紹介しなければ……




って言うか、今はそんなことどーでもいい!





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