Fahrenheit -華氏- Ⅱ

* Side Ruka *




.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.




「中に入れ!落ちるぞ!!」



啓の怒鳴り声を聞いてあたしはびっくりした。


非常口の階段は雨ざらしで多少錆びているとは言え、そう簡単に崩れるものじゃない。


だけど彼はそこがまるでとても危険な場所であるかのように、声を荒げて顔を怒らせていた。


ただ事じゃない気迫に、あたしは驚きつつも、それでもやっぱり何かの拍子で足を滑らしたりして階段から落ちることをちょっと想像してみた。


だけどそんな簡単に落ちるわけがない。


啓も過保護ね。


そう思いながらクリニックの待ち合い室の扉を開けた。


診察券を入れて待ち時間を確認すると30分はかかると言う。


うんざりするような返事を聞いて、ぐるりと室内を見渡すと、落ち着いた家具が並べてある待ち合い室の椅子は空きがなかった。


仕方なしにエレベーターホールに出る。


そこは喫煙スペースになっていて、カウチと椅子が並べてあった。


あたしはそのカウチの一つに腰を降ろし、タバコを取り出した。


タバコに火をつけたところで、


しまった…啓にここまでの来方を説明するのを忘れた。と思い出した。


この場所は裏口からは入れないようになっている。


駐車場から来る場合は大通りを迂回して正面から入らないと辿り着かないのだ。


ま、いいか。何とかなるでしょ。


そんな風にのんびり思っていると、隣に誰か座る気配がした。






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