Fahrenheit -華氏- Ⅱ



瑠華からの返信はすぐにきた。


“さぁ、分かりませんが。でも社内メールで…と言うかメール自体はじめて送られてきました”


その内容に、またもすぐ俺が瑠華に返信。


“明日は用事があるとか言って断ってくれないか”


何せ瑠華には明日、綾子を引き止めてもらうと言う大役を担ってもらうわけだからな。


綾子が裕二の部屋に来たら大騒ぎどころじゃねぇな。


警察…いや、救急車を待機させて置いたほうがいい。


あ、もちろん病院送りになるのは間違いなく裕二ね。そして何故かとばっちりを受ける俺……


という関係図が容易に浮かび上がって、俺は慌てて自分の考えを消すように頭の上で手を振った。


隣の席で思い切り不審そうに佐々木が俺を見ている。


瑠華はあきれ返った白~い、冷た~い瞳。


アイスクイーンめ…


そんな冷たい視線で見つめられたら、俺…


キュン♪


……してる場合じゃねぇよ。


とにかく緑川がどんな意図で瑠華を誘っているのか探りたい。


瑠華は俺の指示通りすぐにメールを送ったようで、隣のブースをまたも覗き込むと、俺に背を向けてパソコンに向かっていた緑川が何事か気付いたように振り返った。


俺は慌てて顔を戻して


「佐々木、これコピーとってきて」なんて佐々木に仕事を振り、


仕事してます!オーラをかもしだした。


佐々木は


「コピーぐらい自分でとってくださいよ」とブツブツ言いながらも、大人しく席を立つ。


てか俺一応上司ですよね??ついでに言うと部長様ですよね??


と思ったが、これはいつものことだしもう慣れた。


佐々木が席を外すと、俺は小声で瑠華に聞いた。



「返信きた?」






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