Fahrenheit -華氏- Ⅱ



iPodから聞こえてきたのは


♪チャラリ~チャラリラリラぁ~!


大音量のパイプオルガンの音が響いて、俺は思わず停まるところでもないのにブレーキを踏んでしまった。


すでに国道に出ていた俺の車は、後続車から派手にクラクションを鳴らされた。


慌ててギアを入れ替えって再び発車するも、瑠華は何事もなかったように無表情で前を向いている。


尚も響き渡る重苦しいパイプオルガンのメロディ。


…バッハ??『トッカータとフーガ ニ短調』は誰でも知ってる名曲中の名曲。


「あ、あれ??俺こんなの入れたっけ?」


クラッシックはたまに聴くけどiPodに入れて聴く程好きでもない。


間違えたか。と思い直して慌てて次の曲を選曲すると、


~!♪♪


再び大音量で流れたのはバレエ音楽「ロミオとジュリエット、モンタギュー家とキャピレット家」


………!!


おなじみ以前、俺が緑川絡みで瑠華を心配させて怒らせたときの、瑠華の無言の攻撃曲!
※「Fahrenheit -華氏- 」参照


こ、これはもはや俺の間違いなんかじゃないだろう。


念のためもう一曲……


これ以上聴かなくても瑠華のお怒りは分かったが、ちょっと次に入ってる曲が気になったって言うかね。


~…♪


あら…意外にまとも。リズムの良いギター…ってかベース?ノリが良い曲だ。


瑠華がこんな曲を聴くのが意外だったが…



いや、まて。どっかで聴いたメロディだぞ?と首をかしげているときだった。


ジャ、ジャジャーン!!♪


またも大音量でメロディが鳴り、


ほ、布袋寅泰!!?(キルビルのテーマ曲です♪)


ロックンロールだぜ!瑠華!


なんて思ってる場合じゃないよ。やっぱ怒ってらっしゃる!!



ここに来て瑠華はようやく


「あ、私のと間違えました」と白々しくiPodを引き抜く。


iPodまで同じ型式の同じ色!運命感じちゃう♪キュン


してる場合じゃないって。


無言の音楽攻撃に満足したのか、そのあと瑠華は例のごとく無表情に流れる外の景色を眺めていた。


その隣で俺は


ダラダラダラ…


冷や汗が止まりません↓↓



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