Fahrenheit -華氏- Ⅱ



指示された通り、前から突っ込んでいたわけだけど


“前向き”って言葉にはっとなる。


てか“後ろ向き駐車でお願いします”ってあんま見ねぇけどな。


“後ろ向き”って言葉は好きじゃないし、気分まで後ろ向きになりそうだ。


幸いにも看板までも『前向きに』と励まして(?)してくれてるし?
(※別に励ましてるつもりじゃありません。エンジンなどの騒音などで隣家の迷惑にならないように、との配慮です)


「な、何か食いに行こうか」


俺は何でもない風を装って瑠華を振り返ると、


「すみませんでした…」


瑠華は前を向いたままぽつり。


「え……どーした??」


てかこの場合、場もわきまえずチューを迫った(てかした)俺が悪いんじゃね?


店も決めてないし。




「あたし…感じ悪かったかと…反省しています。


あなたに冷たい態度とったこと、謝ります」





へ!?


「い、いゃあ!それはあれだよ、ね??」


思いも寄らないタイミングで、まさかの瑠華からそんな言葉を聞いて


俺はこれ以上にないぐらいみっともなく狼狽して手をあたふた上下させた。


てか冷たいって自覚はあったのネ。


「麻野さんのこともあって、苛々していました。


『何であたしが麻野さんの尻拭いを手伝わなきゃいけないのよ』って、思ったり」


「それはホントにごめん。もー、ほんっとにごめんっ!!」


俺は顔の前で両手を合わせてひたすら平謝り。


車の中じゃなきゃ土下座してた勢いだ。





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