Fahrenheit -華氏- Ⅱ
* Side Ruka*
。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.
フロアを出ると、すぐに共用の廊下が続く。会議室までゆっくり歩いて三分も経たないだろう。
その三分を三秒に縮小する程の勢いで早歩きしていると、あたしの後ろから心音がルブタンのヒールの音を鳴らして慌てて追いかけてくる。
「Hey!Wait!!」
心音の声に不機嫌が混じっていたのが分かったけれど、素知らぬフリ。
あたしの方が不機嫌になりたいわよ。
「ちょっと、ムシ…!?」
と心音がほんのちょっと声を荒げたけれど、心音の言った通り無視。共用の廊下であたしたちの会話を聞かれるのは絶対に良くない結果を招くだろう。
想像した通り、あたしたちが通り過ぎた際、給湯室で休憩していた女性社員二人組が何事か、ちょっと顏を覗かせている。
「柏木補佐?」
「てか、また外資??今度は何だろうね」
と小さな声だったが、ヒソヒソ噂されている。
そうなのだ。
あたしたち外資物流本部は何かとつけて問題が多い。以前村木さんと派手にぶつかり合ったことからはじまって、あたしが大型の案件をヴァレンタインから奪い取ったこと、さらには部長…啓とあたしが付き合ってるかも……
と言うことまで。
全部本当のことだし、それに関してはあれこれ言い訳するつもりもないし、しない。だって何一つ間違ったことじゃないもの。
でも―――
今度あたしがやろうとしてることは―――今はまだ『悪目立ち』で済んでるレベルだけれど、あたし“たち”の計画がバレたら悪目立ちどころじゃない。
「“計画”が違うじゃない」
思わず振り返って心音を睨み上げると
「ちょっとしたSurpriseよ♪」と心音は楽しそうだ。
「こっちから連絡するって言ったわよね」とさらに目を釣りあげると
「そんなに怒らなくてもいいじゃない」と心音は肩を竦める。
まぁ……『大人しくしてて』、『言う通りに』と言う言葉が心音程通じない相手はいないけどね。
ようは諦めも必要ってこと。