Fahrenheit -華氏- Ⅱ
*Side Ruka*
.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.
約5分弱の音楽に体を任せ、久しく忘れかけていたダンスは思いのほか体がそのテンポを忘れていなかったようだ。
腹が立つほど、マックスのリードが良かったと言うのもある。
曲のラストであたしたちは、手を合わせて、しかしあたしはマックスと視線を合わせることはしなかった。彼の胸元で視線を彷徨わせ、音楽が次の曲に入ったのを機にマックスから手を離した。
彼は名残惜しそうにあたしの手を握ろうとしていたけれど、それより早くあたしが彼の手から逃れた。
ダンスを終えて最初に探したひとは―――
啓―――
だけど、彼はこの会場のどこにもいなかった。
さっき散々回ってであろうステップに目が回ったのか、と思うぐらい視界がぐるぐるしていた。その回る景色の中、どこを探しても啓の姿はない。
あたしは慌てて綾子さんに近づき
「綾子さん、啓は?お手洗いですか?」
と口早に聞いた。
綾子さんは小さくため息を吐き
「それがねぇ、急な仕事が入ったとかで帰ったの」
「俺らも止めたんだけど、帰るの一点張りで」
と二人も困惑した様子だった。
「佐々木さん、け……部長は何の案件で?」と真剣に聞くと、睨んでいるつもりはないけれど睨まれたと思ったのか佐々木さんはビクリと肩を震わせ
「ぼ、僕もあまり詳しくは…」と声を震わせている。
「そう…ですか」
啓―――……仕事?
考えを巡らせているうちに
「柏木様、柏木 瑠華様」
と声を掛けられ、振り返るとさっきのリムジンの運転手さんが会場内をきょろきょろと見渡していた。
「はい、私ですが」と軽く手を挙げると
「お約束のお時間です。お迎えに参りました」と丁寧に挨拶される。
「え……でも…」
啓が手配したリムジンに何故あたしが―――…?
「お連れ様は―――…Max Valentine様とお伺いしていますが」
あたしの元にきた運転手さんが小さなメモを手にあたしと見比べて、
啓――――……?
彼が何故そんな手配をしたのか分からず、
でも……きっと何かある筈だ、それも早急にそうしないといけない、と本能で察知した、と言うことであたしは
「Come on.(乗って)」とマックスを見て外に着けてあるリムジンの方を向いて顎をしゃくる。
「Why? Isn't the party just getting started?(どうして?、これからじゃないのかい?)」とマックスは不思議そうにしていたが
「Anyway, get in the car. I don't really know why either.(とりあえず乗って。あたしも理由は良く分からないけど)」と言うと
桐島さんが「お迎えに来たわけだし、今日の所はあとは俺たちで対処するから」と言ってあたしの肩を軽く押す。
まだ二村さんたちは到着していない。