赤い夜のサーカス

赤い夜のサーカス




彼の腹部から零れる赤いものを見て、ニヤリと微笑むその男


「市長さん!!
なにしてるの、市長さん!!」

きらびやかな衣装に身を包んだ老人、それは市長さんでした


彼は腹部に刺し傷があるとは思わせないような、軽やかにステップを踏み、男の子の前に庇うかのように立ちます


その瞬間に、彼がずっとつけていた仮面がカラリと地面に踊り落ちました


「え、ぇ。
ピエロさん、目も怪我したの!?」


『違いますよ、これは…火傷の古傷です。』


茶色く変色してしまった右目を押さえて、彼は目の前の男を見据えました


『嘘だったんですねなにもかも。
全部、全部貴方がしたこと。』

「ふふ…はははははは!!!」

けたたましく叫ぶかのような笑い声はサーカスの会場全体に響き渡ります


「そうだよ、そうさ。
10年前、町の大切なものを盗んだのもわし、家を焼いたのもわしだ!!」




< 23 / 33 >

この作品をシェア

pagetop