シフォンケーキ

まるで状況を分かっていないらしい安藤がどういうこと?と言いたげに俺を見詰める。

その澄んだ瞳に怯みながらも、俺は言葉を捜して口にした。



「・・・成り行きで・・・オマエのシフォンケーキは俺が食べた。



それで・・・・ゴメン。」


綾人のために作ったのに。

その思いを無碍にしてゴメン。



だけど鞄を間違えたお前も悪いんだぞ。





俺の言葉を聞いて、察したらしい安藤は泣きそうに顔を歪めて俯いた。


暫く、イタイ沈黙。



次に顔を上げた安藤はいやに明るげに笑ってみせた。



「い、いいの!梓クン、気にしないで!
な、なんていうのかノリだったの。
ホラ、綾人クンの貢物ってあげるのが醍醐味っていうか。
あんなに沢山貰って全部一々本気で返してくれるなんて誰も思ってないし。

だから、私も、別に・・・・」





ウソツキだな、安藤。

しかも下手。


握り締めている拳が力入りすぎて白くなっている。


大体、オマエ、ノリとかそんなミーハーな精神持ち合わせちゃいないくせに。
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