シフォンケーキ

期待の眼差しに晒されながら、俺はホールからほんの一欠け千切って口に入れた。


でもさ、安藤。

今日のお題は『メロンパン』だぞ。

シフォンケーキなんて作ってる場合かよ。


生地はフンワリ膨らんでいて、アヤシイ水玉もない。

味はほんのり甘くて・・・・・・飲み下すのに苦労するほどほろ苦く感じた。

苦味は俺に限った味覚なんだろう。

クッキング好きの母親に教えを請うただけあって美味しかった。



及第点。


これなら綾人も喜ぶよ――――――――――――




なけなしの誠意でそう言おうとして












「好き」



突拍子もない台詞に遮られた。
< 35 / 40 >

この作品をシェア

pagetop