【短編】らぶれたー
まだ、手紙には何も書いてない。




いや、正確には
宛名だけ書いた。




「笠岡くんへ」



……ただ、それだけ。





頭の中で知っている限りの
甘酸っぱい言葉を並べる。


でも、どれも
しっくりこなくて
文字にすることなく、消した。






思いついた言葉はすべて
ただ、私だけの
言葉になってしまう。






本当はすべて、
笠岡くんに届けたい言葉なのに。






でも、いざシャーペンを握り
文字にしようと思うと

照れくさくて。
恥ずかしくて。




なかなか文字にできない。
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