angel ring
消灯時間は過ぎ、暗い病室。

「おぎゃー、おぎゃー…」

隣の病室から聞こえてくる赤ちゃんの泣き声…


私には赤ちゃんがいない…

なのにどうしてここにいなきゃいけないの…

「どうして…」

私は純のいないおなかを抱きしめるようにして泣いた。


涙はどこから出て来るのか…枯れる事なく溢れ出てくる。


辛くて…

辛くて…

胸が苦しい…


純はもっと苦しくて、辛かったんだと思うと更に私の胸を締め付けた。



あれから純は優のお父さんと、お母さんに連れられて、優の実家で眠っている。



純のいない病室。

私は窓の外を見つめる…




純に会いたい…


純はきっと寂しがってる…

一人にしたら純がかわいそうだよ…

純の所に行かなきゃ…

はやく純に会いに行かなきゃ…

窓を開け窓から下を見下ろす。


(ここから飛び降りたら純に会えるかな…この苦しい気持ちがなくなって楽になれるのかな…)


私は窓の側にあった椅子の上に立って片足を窓枠にかけ身をのりだした。


「優…ごめんね…でも純がかわいそうだから…純は一人じゃ何もできないから…母親がいなきゃダメなんだよ。ごめんね優…愛してるよ…」

そう言って私は、目を閉じて優の顔を思い浮かべた…。



大好きな優の笑顔…

子供みたいにすねる優の横顔…

映画を見て感動した時の泣き顔…

優との思い出が一気によみがえってくる…

そして

優の悲しい顔…


(…!!!)

はっ!としたその時

「玲!!」

後ろから優の声がして後ろに抱き寄せられた。

私は椅子からバランスを崩して優と一緒に床に転がった。


「何やってんだよ!玲が死んで本当に純が喜ぶと思うか?玲が死んだら俺はどうなるんだよ!純も玲も失ったら…俺は…どうしたらいいんだよ…一人にすんなよ…」

そう言って優は泣きながら私を強く抱きしめた。

優の大粒の涙が私の腕に落ちてくる。


辛いのは私だけじゃないんだ…

優だって同じように辛いのに…

残される人の事を考えもしないで…

私だけその辛さから逃げようとするなんて…

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