angel ring
醜い心
一ヶ月もたつと、純の噂は周りに広まった。

噂は怖いもので

人に伝わる度おもしろおかしく変わっていく。




『最初から障害を持って生まれたみたいでダメだったんだって』

『障害の原因は玲奈がタバコと酒を妊娠中にもかかわらずやっていたから』

『玲奈が妊娠してるから優が浮気して病気もらって玲奈に移ったらしいよ』

『玲奈、妊娠してるのにやりまくってたんだって』


そんな噂が広まっていた。


私はタバコは吸わないし、お酒も妊娠中は飲んでいない…

優とのセックスだって…赤ちゃんが気になってできなかったし…


純の事はすごく大事に大事にしてたのに…

ひどい…。



「実際、そうなった人にしかその気持ちはわからないんだよ…だからそうやって人の不幸をおもしろがれるんだって。言わせたい奴には言わせとけばいいから」


優はそう言うけど、私は嫌だった。


「だって純がそうやって噂のネタにされておもしろがられてんだよ!優は平気なの?」

私は思わず声を荒けてしまった。

「玲…たしかにいい気分はしないけど、俺と玲が本当の事分かってればそれでいいじゃん!」

優はそう言って優しく微笑んだ。


優は大人だ…

私なんかより、ずっと大人。

冷静で…

頼りがいがある…


そうだよ…

私と優が純の事分かってあげてれば、それでいいよね…



私は優がいなきゃダメなんだって改めて思った。



私は優の背中に抱き着いて言った。

「忘れてた…」

「ん?何が?」

私は本当に小さな声で言った。

「好き…」

「えっ?何て言った?」

「もう言わないよ」


純の事があってから

ずっといってなかった言葉…

忘れてたよ…


この言葉も…

笑顔も…


私はあの日以来初めて笑った。

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