【完】貴方が居たから。
コーヒーを飲み干し、二つの缶をゴミ箱に捨てる。

カンカン…と音を起てる空き缶。



「名刺、渡しとく。俺が遅刻したら“遅い!!”って電話してや。あ…泣きたい時もな」



彼はそれだけを言って立ち上がり、後ろ手を振りながら、暗い夜道を進んで行く。

どうして人に優しく出来るのだろう。

初めて出会ったタイプの人に、新しい感情を出せた。

心が揺れたのは久しぶり。

もしかしたら、初めてかも知れない。

兄貴が初めて補導された時や、母親が入院した時も、驚きも泣きもしなかった。

あんな人が、兄貴だったら…。

そんな事も思った。




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